IT業界で働きたいと考えている方にとって、SESとSIerは魅力的な働き方です。しかし、両者の違いを理解せずに選んでしまうと「考えていた仕事と違う」と後悔する可能性があります。
この記事では、SESとSIerの違いについてさまざまな角度から解説します。記事を読めば、自分にとってSESとSIerのどちらが適しているかわかります。
SESとSIerの最大の違いは、契約形態と仕事内容です。それぞれの違いを理解して、自分が目指すIT業界での理想的な働き方を実現しましょう。
目次
SESとSIerはIT業界での業務形態を示す言葉ですが、目的や役割が異なります。SESは、企業が特定のプロジェクトや業務に技術者を派遣して行う形態です。SIerは企業の業務課題を解決するため、システム開発を請け負います。
SESとSIerは求められるスキルの幅や顧客との関係性も異なるため、自分の適性や希望を考慮して選びましょう。
SES(システムエンジニアリングサービス)は、IT業界で広く利用されている人材派遣サービスの一形態です。主にIT技術者を顧客企業に派遣し、顧客の指示のもとで業務を行います。SESの特徴として、契約期間は通常3か月〜1年程度であり、派遣元企業は人材の提供のみを担当するのが特徴です。
技術者のスキルや経験に応じて選定され、顧客企業のプロジェクトや業務に柔軟に対応できます。SESを利用すれば、顧客企業は必要なときに、必要なスキルを持つIT技術者を確保できるメリットがあります。派遣された技術者は、主にシステム開発や保守、運用などの業務を行う場合が多いです。
SESの仕組みは企業のIT人材ニーズに柔軟に対応できるので、多くの企業で採用されています。IT業界の人材が不足している中、企業と技術者をつなぐSESの役割は重要です。
SIerとは、システムインテグレーターの略称で、顧客の要望に応じて情報システムの構築を一貫して行う企業を指します。複数のハードウェアやソフトウェアを組み合わせて、統合的なシステムを作り上げます。SIerの業務は情報システムの企画や設計、開発、構築、運用、保守などです。
SIerは、プロジェクト全体の管理や責任を負うのが特徴です。顧客との直接的な関係を構築しながら、大規模なシステム開発や長期的なプロジェクトを担当します。SIerは要件定義から運用まで幅広く関与するのが一般的です。SIerに求められるスキルは、技術力だけではありません。
ビジネス知識やプロジェクトマネジメント能力も重要です。大手企業や官公庁などの大規模システム開発を行う顧客と仕事をすることが多いため、幅広い知識と経験が必要になります。
SESとSIerは、IT業界における異なるビジネスモデルで、以下の項目で違いがあります。それぞれの特徴を理解することが、IT業界でのキャリア選択において重要です。
SESとSIerでは、契約形態に大きな違いがあります。SESは労働者派遣契約を結びますが、SIerは請負契約または準委任契約を締結します。SESの場合、顧客企業と派遣会社の間で契約が交わされ、派遣会社は期間や業務内容を定めて人材を派遣するのが一般的です。
派遣された社員は顧客先で指揮命令を受けて働きます。SIerの場合は顧客企業とSIer企業の間で直接契約を結び、プロジェクト全体の責任を負います。自社の管理下で業務を遂行するのが特徴です。契約形態の違いにより、SESは契約期間終了後に別の案件に移動できる柔軟性があります。
SIerは通常、プロジェクト完了まで継続して従事することが可能です。契約形態の違いがSESとSIerの働き方や責任範囲に大きな影響を与えています。
SESとSIerでは、以下のとおり仕事内容の違いもあります。
SESは顧客先で作業を行い、顧客の指示に従って業務を遂行します。与えられた作業に集中し、比較的定型的な業務を担当するのが特徴です。SIerは自社オフィスでの作業が主となり、企画から運用まで一貫して担当します。プロジェクト全体を管理し、顧客のニーズに合わせて柔軟な対応が必要です。
定型的な業務に集中したい方はSES、幅広い業務にたずさわりたい方はSIerが向いています。SESとSIerでは仕事内容に大きな違いがあるので、自分に合った働き方を選びましょう。
プロジェクトとの関わり方は、SESとSIerで大きく異なります。SESは顧客先に常駐し、指示された業務を行いますが、SIerは自社内でプロジェクトを主導的に進行するのが特徴です。SESは、比較的短期間で顧客のプロジェクトに部分的に参加します。
指示された範囲内で業務を行いますが、短期間で顧客の既存システムへ適応する能力が求められます。SESは顧客のニーズに応じて柔軟に対応できますが、プロジェクトへ関与する範囲が限定的です。SIerはプロジェクト全体を統括し、大きな責任を持ちます。
SIerは新規システムの設計から実装まで長期的にプロジェクトを管理し、プロジェクト全体の成功責任を負うのが特徴です。プロジェクト全体を見据えた提案や管理が求められるため、より広範囲な知識とスキルが必要となります。
SESとSIerはプロジェクトへの関わり方の深さや、責任の範囲が大きく違うと理解しておきましょう。
SESとSIerでは、求められるスキルセットに違いがあります。SESエンジニアには特定の技術に特化した専門性が重視されますが、SIerには幅広い知識とスキルが必要です。両者に求められるスキルは、専門的な技術スキルや特定の業務領域や技術分野の知識などがあります。
SIerはプロジェクト管理能力やコミュニケーションスキル、問題解決能力も必要です。SESエンジニアは、クライアント企業のニーズに合わせて、特定の技術スキルを磨くのが大切です。SIerはシステム全体を見渡せる幅広い知識と、プロジェクトを円滑に進める能力が求められます。
両者ともに、技術力とコミュニケーション能力を高めれば、キャリアアップの可能性が広がります。新しい技術やトレンドをキャッチアップして成長を続け、キャリアアップを成功させましょう。
SESとSIerでは、責任の範囲に大きな違いがあります。SESは顧客先での責任が限定的ですが、SIerはプロジェクト全体に責任を持つのが特徴です。SESの責任は指示された作業の遂行に限られ、トラブル時の対応範囲は限られています。契約範囲外の責任は負わないのが特徴です。
SIerは要件定義から納品まで、広範囲の責任を負う必要があります。プロジェクト管理能力も求められ、顧客との折衝や問題解決もSIerが担当します。予算や納期の遵守の責任も負うのが一般的です。SESとSIerでは責任の範囲に明確な違いがあるので、自分に合った働き方を選ぶときの参考にしましょう。
SESとSIerでは、キャリアパスに大きな違いがあります。SESでは経験を積んでスキルアップし、より高単価の案件へ移行できます。技術力を重視するため、専門性を深める傾向があるのが特徴です。SIerでは社内でのキャリアアップが主流です。
管理職やプロジェクトマネージャーへの道が開かれており、同じ職場で幅広い知識と経験を積む傾向があります。SIerはマネジメントスキルも重視されるのも特徴です。SESの場合、フリーランス化や独立も選択肢の一つです。
案件を自由に選べるので、自分の希望するキャリアの方向性を決めやすいメリットがあります。SIerの場合は、会社の方針に沿ったキャリア形成が一般的です。組織の中で着実にステップアップしていく道筋が用意されているのが特徴です。
SESとSIerではキャリアパスに違いがあるので、自分の適性や希望に合わせて選びましょう。
SESとSIerの1日の流れには大きな違いがあります。SESは客先で勤務して指示された業務を遂行しますが、SIerは自社オフィスに勤務して、幅広い業務を行います。それぞれの特徴を理解して、自分に合った働き方を選びましょう。
SESの1日の流れは、クライアント企業のオフィスでの業務が中心となります。SESの特徴として、クライアント企業の一員として働くため、クライアント企業の社員と同じような1日の流れになります。所属元のSES企業への報告も必要なのが特徴です。
SESの1日の流れは、クライアント企業の業務に深く関わりながら、専門的なスキルを活かして働けます。クライアント企業の一員として働きつつ、専門性を発揮できる環境が魅力的です。
SIerの1日の流れは、業務をこなすためにさまざまな対応に追われます。SIerの1日の業務の流れは以下のとおりです。
朝は全体ミーティングから始まり、1日の予定や進捗状況を確認します。顧客の要望を分析してシステムの設計作業に取り掛かります。実際のプログラミングや開発作業に時間を割く日が多いです。開発したシステムのテストや品質管理も重要な業務です。顧客とのミーティングや報告も欠かせません。
顧客にプロジェクトの進捗状況や課題について説明し、信頼関係を築くのも大切な業務です。プロジェクトの記録や仕様書の作成など、ドキュメント作成や更新作業も行います。1日の終わりにはチームで振り返りのミーティングを行い、成果や課題を共有し翌日の準備を整えます。
SIerの1日はさまざまな業務をこなす、充実した業務内容です。
SESとSIerのメリットの違いを理解して、自分の目指すキャリアや働き方に合う方を選びましょう。
SESはさまざまな職場環境や案件を経験できるので、幅広い知識やスキルを身に付けられるメリットがあります。スキルアップの機会が豊富にあるため、専門性を高めることも可能です。SESは柔軟な働き方が可能で、短期間で高収入を得られる可能性があります。
プロジェクト管理の負担が少なく、技術に特化した業務に集中できるのも大きなメリットです。正社員雇用の可能性もあるため、将来的なキャリアアップにつながります。業界や技術のトレンドを把握しやすいのも、大きな魅力です。ワークライフバランスを取りやすい環境が整っているため、私生活も充実させやすくなります。
SIerは大規模プロジェクトにたずさわる機会が多いので、幅広い技術スキルを習得できるメリットがあります。システム開発の全工程に関わると、総合的な経験を積むことが可能です。SIerとして働いていると顧客とのコミュニケーション能力が向上し、プロジェクトマネジメントスキルが身に付きます。
キャリアアップの機会が豊富にあり、安定した収入を得られる点も魅力的です。社内での研修や教育制度が充実しているので、継続的なスキルアップができます。大手企業との取引が多いため、ビジネスネットワークを構築する機会も豊富にあります。技術的な専門性を高められるのも、大きな魅力です。
さまざまなプロジェクトにたずさわれば、特定の分野での専門知識を深められ、IT業界でのキャリア形成に大きく役立ちます。
SESとSIerには、それぞれに異なるデメリットがあります。SESとSIerのデメリットを理解し、自分の価値観や目標に合わせて働き方を選びましょう。
SESのデメリットは、以下のとおりです。
SESは客先に常駐するため、新しい技術を学ぶ機会が少なくなります。プロジェクトごとに仕事が変わるので、専門性を深めるのが難しく、長期的なキャリアプランがなかなか立てられません。正社員と比べて待遇面で差がつきやすく、待遇や福利厚生が不安定な場合もあります。
プロジェクト終了時に、次の仕事の保証もないのも大きなデメリットです。職場がプロジェクトごとに変わるため、社内の人間関係が希薄になることがあります。同じような業務にたずさわることが多いため、技術の専門性も狭くなります。
SESには多くのデメリットがあるので、自分のキャリア目標と照らし合わせて慎重に検討しましょう。
SIerは長時間労働や残業が多い傾向があるのが、大きなデメリットです。大規模プロジェクトの管理や顧客との調整に時間がかかるため、労働時間が長くなります。プロジェクト管理の責任が重く、顧客との交渉も多いので、精神的な負担やストレスも大きいことが特徴です。
契約や納期のプレッシャーもあり、仕様変更も頻繁に発生するため、常に緊張状態が続きます。キャリアの専門性を深めるのが難しい場合もあります。大規模な組織で働くため個人の裁量権が限られ、技術の専門性を追求しにくいです。収益性重視のため最新技術の導入が遅れるケースもよくあります。
SIerで働くときはデメリットを理解したうえで、自分に合っているかどうかを判断しましょう。
SESとSIerに向いている人の違いは、個人の性格や志向、キャリアプランによって異なります。自分の特性に合わせて、向いている方を選びましょう。
SESに向いている人の特徴は、以下の特徴を持つ人です。
チームワークを重視し、問題解決能力が高い人もSESに適しています。SESは、さまざまな顧客先で働くので、環境の変化に柔軟に対応できる能力が重要です。常に変化するIT業界で活躍するには、新しい技術や知識を積極的に吸収する姿勢も欠かせません。
SIerに向いている人には、以下の特徴があります。
SIerには高い論理的思考力や、複雑な問題を分析し解決できる能力が求められます。顧客や社内のさまざまな部署とのやり取りが多いため、優れたコミュニケーション能力も重要です。大規模なシステム開発プロジェクトを統括するため、プロジェクト管理スキルも欠かせません。
技術的な知識と業務知識の両方を持っているのが理想的です。SIerの仕事はチームで行う場合が多く、チームワークを重視できる人も適しています。技術の進歩が速い業界のため、継続的な学習意欲も必要です。
新しいシステムを設計したり、プロジェクト全体を見渡したりする場面が多く、創造性や大局的な視点を持つのが重要です。SIerの仕事は幅広い分野に及ぶので、さまざまな業務に適応できる柔軟性も求められます。
SESとSIerには、それぞれに違った特徴や、メリット、デメリットがあります。SESは人材派遣が主な業務で、技術に特化した柔軟な働き方が可能です。SIerはシステム開発・導入が中心で、幅広い経験とマネジメントスキルを身に付けられます。
契約形態や仕事内容、プロジェクトへの関与度、求められるスキル、責任範囲、キャリアパスなどの面でも違いがあります。1日の業務フローも異なるので、自分に合った働き方を選ぶのが大切です。SESとSIerのどちらが自分に向いているかは、個人の適性や目標によって変わってきます。
自分の強みや将来のキャリアプランを考えながら、より適した働き方を選びましょう。
1998年に創業してから開発 ・ 運用実績は2,000件以上です。「どこにでもある中小ソフトハウス」ですが、受託・SES案件に従事する中で、数多くのSES会社やエンジニア転職の実例を見てきました。 その中には、良い例も、悪い例もあります。隠すことなくお伝えすることで、あなたのエンジニア生活がより良いものになるようにサポートいたします。